秋田犬の思い出

幼少期、両親の共働きのためかぎっ子として育った私はいまもその影響を強く受けている。小学1年の夏休みに家に一人残すことを心配した両親は、私を母親の実家にひと夏預けた。姉のような従姉妹たちが十分可愛がってくれたが、なにぶん農家なのでまるで様子が違う。大きな蚊帳を立ててその中で寝る暮らしや、牛などもまじかにいてカルチャーショックのようなものを感じたのを覚えている。食事も合わなかったので心配した伯父らが子どもでも食べやすいハムを買ってきてくれたこともあった。自宅では学校から帰って寂しくないようにと小学入学時に合わせて飼ったのが秋田犬のメス犬だった。父親が大きな犬小屋をこしらえ、その中に入って戯れて帰宅後の寂しさをまぎらすのが小学1年のころの楽しみだった。その後も何匹か犬を飼ったが、秋田犬の忠実さは記憶に残る。夜、エサの時間になっても「待て」と父親が掛け声をかけると我慢して食べない。「許す」と言うと、待っていたかのように猛然と食べだす。食事中に近くに寄ると「ウー」と威嚇の声を発する。いまだに家の中で「許す」と冗談めかして出てしまうことがあるのはこの名残だと思う。猫を飼ったことがないので完全なイヌ派だ。この年齢になると、秋田犬を無性に飼いたくなる。死ぬまでに実現できればいいのだが…。

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