「規範」を失った社会で

この30年くらいの歴史の中で現在と最も異なる象徴的な事件として、私は1994年5月の永野法務大臣の問題発言にからむ更迭劇を思い浮かべる。同大臣は就任早々、太平洋戦争について「侵略戦争という定義は間違っている」「(南京虐殺は)でっち上げだったと思う」などと発言し、更迭された。いまならこんな処分は起きないかもしれない。90年代はまだ何が歴史的真実で、何を言ったら制裁を受けるかといった明確な「規範」が生きていた。今の日本社会は、右であれ左であれ、何が真実で、何がデマかがわかりにくい社会となっている。「デマの天才」たちが、好き勝手に振る舞うことが許される社会となっているからだ。安定感を失った、流動化した社会と言いかえてもよい。その根本は教育に帰結する。結局は政治の問題といえるものだろう。

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