真実性と相当性

職業柄、名誉棄損裁判を訴え、訴えられたことがある。その少しばかりの経験をもとに、11月18日に最高裁で確定した植村隆(元朝日新聞記者)VS櫻井よしこ裁判について言及したい。これは慰安婦問題を最初にスクープした植村氏の記事を、櫻井氏が「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」「月刊WiLL」などで捏造記事と指摘したことで植村氏側が名誉棄損提訴して始まったものだが、結果は、おおむね、櫻井記事の真実性は認められず、相当性で救済されるという異例の展開となった。櫻井氏の記事はほぼ真実性がないと判断されたため、本来は敗訴必然であったが、裁判所はなぜか櫻井記事に異例なまでに寛容で、相当性を認める結果となった。真実性がない記事(虚偽の記事)の場合、相当性が成り立つには、通常のメディア界の常識では、報道被害者に対する取材が行われていることが不可欠条件となるが、櫻井氏は植村氏に対して肝心の取材を行っていない。要するにまともな取材もせずに、櫻井氏が相手の書いた記事を「捏造」と誹謗する記事を書いたわけだが、同女が安倍晋三首相(当時)の強力な支援者であることが忖度されたかどうかは知らないが、異例ともいえる結果となった。

これをもって櫻井氏の「お仲間」である門田隆将こと門脇護は自分のツイッター上で櫻井氏の「全面勝訴」などと印象操作に励んだが、事情を知る者からすれば、勝訴というよりも、「お目こぼし」を受けたといったほうが真相に近い。櫻井氏は異例の形で救われる結果となった。

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