血縁の陥穽

俗に「血がつながっている」という言葉がある。近しい親戚関係をいう場合に使われ、義理の関係(俗に血がつながっていない場合)と対比して使われることが多い。だがよく考えてみると、この言葉は矛盾に満ちている。一般に使われる「血がつながっている」は、両親、祖父母、おじおば、いとこ、いとこの子くらいまでは明確に含まれると思われるが、いとこは4親等、いとこの子は5親等、いとこの子ども同士(はとこ)は6親等だが、そのくらいまでは感覚として入るのだろう。だが実際には血がつながっているという意味では、人類はホモサピエンスとして血がつながっている存在だ。平たくいえば、世界のすべての人間は「遠い親戚」であり、地球に住むホモサピエンス全員が親族関係にある。だがその親族同士が世界のいたるところで紛争をつくり、いまも殺し合いを行っている。日本では戦後80年、戦争をせずに済んでいるが、最近は隣国の中国を敵視する感情が増大しており、中国人を敵扱いする風潮も一部で強まっている。人間のもつ本能がなす術といえようが、いまいちど冷静に考えれば、いたずらに敵愾心を高め、その防御手段にジャブジャブ国家予算を使い、人間の生存に必要なお米の生産に満足な国家予算を回さない馬鹿げた政治がまかりとおる状況はおかしくないか。現代日本は世界全体とはいわないまでも、「アジアは皆兄弟」くらいのスケールから出発するのがふさわしい局面と感じる。

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