安倍元首相の突然の死去に伴い、生前の行動を美化する動きが目立つ。いいところだけをほめ、悪い部分はあえて口にしないという日本人的な行動に思えるが、「公人」はそれで済む対象ではない。多くの人が外交の卓説さなどを口にするなか、もっとも指摘されるべき悪事は、民主主義の根底に大きな穴を空けたことだ。さらにその上で平然としていたという行動だ。自らの国会答弁が原因となり、財務省の公文書改ざんを許し、さらにその悪事に関わった人間たちをなんら処罰しなかったどころか、むしろ出世させた。権力者としてのこれらの行動は、今後の行政は自分たちに都合の悪い文書はどんどん隠して構わないと奨励していたに等しい。公文書の改ざんは民主主義制度の破壊行為だ。大きく空いた穴は依然、元に戻らないまま不正常な状態にあると断じる。