日本を破滅させた「靖国信仰」が増殖する時代

戦前戦中の日本政府が国家神道を強制し、従わない他宗教を弾圧した事実はよく知られている。創価学会の前身である創価教育学会も初代会長を獄中で失った被害者だ。いま靖国神社には戦争博物館として「遊就館」という名の施設が運営されている。私も何度か取材で訪れたことがあるが、驚くべき施設であることは間違いない。なぜならその認識が、戦前のそれとまったく変化していないからだ。

このほど白水社から『戦争記念碑は物語る』という興味深い単行本が発刊された。著者はイギリスのロンドンに住む50代の作家・歴史家で、世界中の戦争記念碑や記念館を訪ね歩き、それらを25章にまとめた内容である。25章のうち2章が日本の施設にあてられている。一つは「破壊」の部に入れられた「原爆ドームと平和祈念像」の章。もう一つは「モンスター」の部に入れられた「靖国神社」の章である。「靖国神社」の章で著者はこう記している。

「神社の敷地内には戦争博物館があり、その入り口は神社からわずか30~40メートルしか離れていない。私はこの博物館で数時間を過ごし、ここを開かれた心で見学することに決めていたが、帰る頃にはすっかり気分が悪くなっていた。この博物館は、日本が中国を侵略したのは、中国人のせいであるとしている。そして、日本が真珠湾攻撃をしたのは、アメリカ人のせいなのだそうだ」

外国人が驚くのも無理はない。さらにこんな文章も綴られている。

「この博物館での否定の規模は、私がこれまで出会ったことのないものであった。日本が戦争の責任の一端を担っていたかもしれないということを、微塵も受け入れてはいなかったのである」

この本に納められた他の23章には、アメリカ、イギリス、ロシア、オランダ、ハンガリー、イスラエルなど多彩な国家の施設が並ぶ。アジアでは中国、韓国も紹介されている。そうした世界中の戦争博物館の中で、靖国神社の戦争責任否定のレベルは、「私がこれまで出会ったことのないもの」というから、世界で突出して、無責任な姿をさらしていることを意味する。

私はこれらの記述を見て、子どもの姿を連想した。「ぼく悪くないもーん、悪いのは〇〇ちゃんだもーん」。親や先生に怒られたときに責任転嫁するよく見られる光景である。

日本を滅ぼした元凶は、実はこうした精神性の持ち主であったことを示している。そう思えば、現代もそうした輩が多く跋扈している特異な時代だ。精神性は何も変わっていないのだ。私はそうした姿を「右翼小児病」と呼んでいる。いま、日本社会を席巻しているのはこの「右翼小児病」(=靖国小児病)と実感されてならない。

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