日本の「健全な土壌」を破壊した2人

よく書籍や雑誌の企画で「日本をダメにした●人」というのがある。私が近年日本社会の土壌を壊したと強く感じるのは、以下の2人だ。

一人は言論人の範疇に入るが、月刊Hanadaの花田紀凱編集長だ。もともと文藝春秋の「敏腕編集者」の名が高かったらしいが、「ナチガス室はなかった」とのトンデモ記事で編集長をクビになり、同社を追われた。敵であるはずの朝日新聞社にすり寄り、同社から雑誌を出すなどしたが鳴かず飛ばず。角川書店など複数の雑誌をへて活路を見出したのが月刊WiLLの創刊だった。南京虐殺はなかったなどの歴史改竄をウリにする雑誌で、「ナチガス室はなかった」の延長線上でつくられた雑誌に見えた。当初は思うように成功しなかったが、政治状況の変化がこの雑誌の“追い風”となった。民主党政権の発足とそれに続く第2次安倍極右政権の誕生だ。花田氏も安倍氏もどちらも過去の歴史に対して「誠実さ」をもたず、自分のいいように解釈する「反知性主義」が共通する。

安倍元首相は国家の民主主義の指標ともいえる情報公開理念を徹底的に破壊した悪しき首相として後世に名を残すだろう。自らの国会発言で役人が公文書改ざんを行い、本来ならそれらの役人を厳しく処断するべき最高権力者が逆のことをしてしまった。安倍元首相の発言がもとで善意の役人が一人命を落としている。ウソとゴマカシを土壌とする政治。その悪影響が日本社会の隅々に波及して現在に至る。

百田尚樹という作家が重要な部分で事実と異なる記述を満載した『日本国紀』なる書物を発刊し、よく売れたらしいが、これなどこの国の社会が病んでいることの裏返しの証明だ。同人の本が売れた分、この国のおかしさの象徴なのだ。これなども上記の花田、安倍両氏の活動のたまものの成果といえる。

「土壌を壊された社会」を修復することは難しい。何が歴史の真実で何が意図的なウソなのかの判断を国民市民ができにくい状況が生まれている。今こそ、心ある歴史家をはじめ、虚偽と対決する姿勢を鮮明にするべきだ。

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