バーチャルに生きる男

将来、門田隆将こと門脇護(1958-)の墓碑銘にふさわしい文言は次のようになるだろう。「この男に、真実はなかった」――。週刊誌時代から多くのデマで金儲けしてきた門脇について、本年4月、私はささやかな小著を世に送らせていただいた。タイトルは『疑惑の作家 「門田隆将」と門脇護』(論創社)だが、この本の出版に先立ち、同人にはすでに指摘されていた盗用常習疑惑の事実関係に関する質問状を送った。

具体的には、『風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故』(集英社)、『康子十九歳 戦渦の日記』(文藝春秋)、『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、角川文庫)の作品において他の作品や記述からの「ひき写し行為」が大量無数に見られる点について、その著作権者に対してどのような許諾を得ているかを逐一質問する内容だったが、門脇はこの質問を黙殺するのでもなく、相手を罵倒する文章を弁護士名で返送することで対応した。要するに、肝心の質問には何も答えないままの対応だったのである。その状況は、同書出版から半年以上がすぎた現在も、何も変化していない。

自らが「書き手」として致命的な疑念を突き付けられているにもかかわらず、それに真正面から何も回答せず(当然ながら何ひとつ説明しないまま)、知らぬ顔をして逃げ切ろうとする姿勢。近年も繰り返しどこかで見てきた姿勢だと思ったら、これは不祥事にまみれた際の「安倍政治」の姿そのものといえる。

要するに、現実というファクトに対応せず、バーチャル世界で生きている姿に等しい。このバーチャル男は、現在は、将来中国が日本を占領し、属国化する(要するに日本は中国に奴隷化される)との妄想をもち、盛んに喧伝している。昨年のアメリカ大統領選でトランプが勝利した旨を主張し続けていたのと似通ったレベルだ。

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