アメリカ前大統領への弾劾裁判は不発に終わった。米連邦議事堂襲撃事件を扇動した罪を問われたものの、共和党議員には次の中間選挙で対立候補を立てられることを恐れる者も多く、正当な声を発することができなかったとされている。それだけいまもトランプに扇動された有権者が多く残っている実態を示している。だがこれで終わったわけではない。同じ事件で議会の弾劾裁判とは別に、刑事捜査も進んでいるし、さらに州政府レベルでもジョージア州などで負けた選挙を勝ったことにするように圧力をかけた問題などが捜査されていると伝えられる。さらに襲撃事件では5人が命を落とした。トランプの責任を民事裁判で求める可能性もある。さらに加えて、襲撃事件において殺害対象となっていたペロシ下院議長の方針で、9・11事件の際と同等の「調査委員会」の設置方針が報じられている。法律を新たに制定して超党派で調査を行うという。9・11の調査委員会では1年8カ月の期間、160人の公聴会証言、国内外の関係者1000人の面接調査を実施し、600ページの最終報告書にまとめた(本日付毎日新聞)。それほどの数にならぬとも、念入りな調査が今後も継続して行われれば、トランプが暴徒らによるペンス副大統領の殺害行為を黙認していた事実や、トランプが共和党議員から暴徒らの行動を止めるよう求められてもすぐに動こうとせず、事実上、容認していた事実などが具体的に出てくる可能性がある。いずれにせよ、サイコパス(良心の呵責を持たない特異人格者)は常に自分本位で、勝手気ままに振る舞う。トランプほど見事なサイコパスの事例も珍しいと思われるが、アメリカ精神医学会などはそうした指摘を行うことにはあまり関心がないように見受けられる。