空手雑感 31

空手の取材で沖縄に通うようになってさまざまな空手家と知り合うことになった。それでも、全体から見ればごくごく一部にすぎない。本土でおよそ耳にしたことがなかったのは、野外で稽古するグループがあることだろう。自然の中の木を巻き藁がわりに使用し、昼も夜も関係なく稽古する。本土の感覚で接しているとまず驚くことになるのは、悪天候のときほど稽古が充実するという言葉だった。ふつうの感覚では、台風が来れば野外での稽古は「中止」になる。通常は安全のためだ。だがこれは本土空手の感覚であり、あくまでスポーツの感覚だ。だがこのグループは、台風のときこそ、身に付くものがあると確信し、大嵐の日を好んで稽古に使う。もちろん本土で一般的にイメージされるような掛け声ありの集団稽古の空手ではない。つまり、本来の格闘技の修行は、大自然と一体のものとしてあったということだと思う。そうした環境下でこそ、本能的に研ぎ澄まされるものがあるということだと感じている。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。