トランプ現象と百田尚樹現象の共通点

米国連邦議会議事堂襲撃事件から1年がすぎ、各紙ともアメリカの状況を取り上げている。子細に読み比べてみても、米国で一定層の人々がいまだに「選挙不正」があったと信じており、さらに襲撃事件についても「民主主義を実現するために行った」と信じている人が一定数いるなど、民主主義の土台そのものが破壊されている様相が顕著だ。特にそう信じている層は共和党支持層に多い。なぜこうした2分化現象が生じたかといえば、ネット社会の到来とともに、人びとが自分の欲する情報を求め続ける傾向があることだろう。そのためトランプ支持者はトランプを持ち上げるテレビやネットニュースを好んで見る傾向が強くなり、逆のバイデン支持者はそれらを見ない。その結果、両派の支持者が2人で議論を始めると、事実の前提から認識がまったく食い違っているので冷静な対話にならないという「断絶状況」が生まれる。日本でも似たような傾向は見られるものの、アメリカほどではない。アメリカはすでに民主主義の土壌が崩壊しているといえるのかもしれない。重要なことはデマや陰謀論を信じ込む層に、どのように真実を伝えるかということに尽きるように思われるが、それが1年前に比べてもアメリカではほとんど改善が見られない状況のようだ。そうした状況をつくった張本人がトランプ前大統領であることはいうまでもない。アメリカのトランプ現象は、形を変えて、日本の百田尚樹現象と通底しているように見える。共通するのは「ウソも平気(=ファクトに固執しない)」「陰謀論に頼る」といった顕著な傾向が挙げられる。いずれも民主主義の土台を壊す要素そのものといえるが、アメリカでは政治の最高指導者がそれらを助長して社会全体を二分化してしまったのに対し、日本はまだそこまでは行っていないということだろう。

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