「極右」と「極左」が肥大化した社会

自民党総裁選を見ていると、まるで戦争を前提にしたような発言が多くて驚く。敵基地攻撃能力、自衛隊法の改正などが安全保障の主たる課題になっているように見えるからだ。一方でどのように平和を構築するかといった外交的な構えはあまり聞かれない。これはこの数年の自民党が安倍晋三という人物に率いられることで相当に極右化した証しといえる。もともと「タカ派」などの呼称で表現されることの多かった自民党内の極右的思考の持ち主たちが安倍氏の登場によって勢力肥大化した結果が現在の自民党総裁選に映るからだ。さらに自民党の「極右」肥大化によって、この国の一方の勢力といえる「極左」、具体的には日本共産党が支持を増やす結果につながった。ある種これは必然的な現象にも見える。共産党の衰退を止めるための最大の歯止めとなる役割を果たしたのが、実は安倍晋三という人物である事実は歴史の皮肉だ。いま共産党の志位委員長はオンライン演説などで、「次の総選挙はわが党が99年の歴史の中で初めて政権入りできるかどうかチャレンジするための選挙」と支持者に訴えている。この状況を作り出したのは明らかに安倍自民党である。

その国の社会構造をやじろべえとして見た場合、両端にある「極右」「極左」が肥大化した社会は、ある意味で不安定な社会といえる。ちょっとしたバランスの変化によって簡単に一方に振れてしまう可能性が高まるからだ。それに比べて中心部に近い箇所がしっかりしている社会は、逆に安定した社会といえる。人間の肉体にたとえれば、中心部が強い社会は、「体幹」の強い肉体と同じだ。社会においてその中心付近部を担うのは、右派にあっては「タカ派」や「極右」ではなく、「穏健保守」であり、昔の「保守本流」である。また左派にあっては日本共産党のような「極左」ではなく、立憲民主党などの「穏健左派」ということになる。「中道勢力」の役割はいやまして大きい。

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