共産党が「敵の出方論」を廃棄できない理由

日本共産党がかつて宮本顕治主導で党大会で承認した「敵の出方論」を、いまも党大会で正式に廃棄できない理由は簡単だ。かつては日本社会党の平和革命路線を批判し、敵の出方によって平和革命でも暴力革命でも対処できるように両面作戦でいくべきだというのが日本共産党の「敵の出方論」だった。戦後の同党の指導者である宮本元議長が作り上げ、それを一貫して承認してきたのが不破哲三前議長だった。現在の志位委員長がこれを新たに党大会の議題に掲げ、正式に廃棄する決定を行うということは、宮本元議長や不破前議長の過去の行動が「過ち」だったという烙印を押すことにつながる。つまり、ソ連のフルシチョフが前任者のスターリンの悪事を暴いた「スターリン批判」のようなことになってしまうわけだ。それは戦後の日本共産党がやってきたことへの「否定」につながりかねない。だから廃棄できないジレンマがある。そのかわり、綱領に暴力革命を匂わす文言を入れるような馬鹿なこともしないし、口頭ではそんな路線はもうとっていないと言い続けているだけの話である。

この状態を指して「ひるおび!」出演の八代弁護士がまだ暴力革命を捨てていない旨の指摘して問題になったわけだが、このコラムで指摘しているように、同党は党内手続き的にはまだ「暴力革命」を捨てていない。すでに70年前とは異なるので、同党が火炎瓶を秘かに作ったりはしていないだろう。武器も蓄えてはいないかもしれない。それでも同党が党内手続きとして正式に「敵の出方論」を廃棄していないという事実は残るのである。

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