門田隆将と森功

本日付の東京新聞特報欄はノンフィクション作家の森功氏が登場し、官邸官僚の動向について解説している。『官邸官僚』の著作をもち、政治と官の動向をだれよりも知悉するジャーナリストの一人であろう。一方で、門田隆将こと門脇護という名のジャーナリストは、取材対象である政治と適度な距離を保たず、政治権力と一体化した行動で知られている。『疫病2020』という著作では、安倍首相のコロナ対策について「民主党政権と何も変わらない」などと罵倒しておきながら、安倍首相の退陣の時期になると、批判して悪かったと米つきバッタのように頭を下げている。要するにポーズの批判だったということになるのだろう。2人の共通点はこのコラムで何度か取り上げたが、同じ時期に同じ「週刊新潮」編集部で仕事をしたという点につきる。だが退社後の仕事ぶりは対照的といっていいいほどに異なっている。端的にいえば、取材対象との距離の問題だ。

森功氏がジャーナリズムの基本に則って、政治権力と適度な距離を保ちながら活動しているのに対し、門田隆将はネット番組で安倍首相と直接面談した事実を自慢げに話すほか、逆に安倍首相の天敵ともいえる石破茂元自民党幹事長に自民党総裁選の渦中にも悪罵ともいえる汚い言葉を投げつけるなど、安倍首相という政治家と心から一体化している姿が顕著だった。2人の行動の違いから学べることは、ジャーナリズムのルールを守るか守らないかという問題だろう。権力を市民の立場からチェックするのがジャーナリズムの最大の役割の一つのはずだが、門田はそれをまっこう否定し、それがまるで朝日新聞記者特有の間違った考え方のようにこき下ろすのが常である。同人にとってのジャーナリズムは、「言論の自由」をふりかざし、事実の裏付けも確認しないで自分の好きなことを書いて、金儲けの道具にするといったところでしかないようだ。

先の昭和の戦争の際、権力べったりの「軍部迎合」の自称言論人は数多く出現したが、門田の言動を見ていると、その再来を見ているかのようである。

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