門田ノンフィクションの虚構 5

戦争物の続きはまだまだあるが、門田ノンフィクションの「バイアス」についてこの回では取り上げよう。すでに多少なりとも記述しているが、門田の作品には明確な傾向がある。一つは日本を悪く評価するものについては扱わない。2番目に安倍首相を本質的には批判しない。さらに旧日本軍あるいは自衛隊を悪くいわないの3点だ。最新刊『疫病2020』でもその傾向は何ら変わらない。いわば、事実に基づくと称しながら、同人の作品は最初から「バイアスのかかったノンフィクション」ということがはっきりいえる。

この本の最終章である第14章を見てみよう。そこには日本を持ち上げる次のような記述が羅列されている。

「依然、日本は持ちこたえていた」

「ゴールデン・ウィークの行動自粛は、間違いなく『歴史に残るもの』だった」

「世界トップの医療水準」

「世界で類をみない衛生観念を持った清潔な国民性」

「他人を思いやる気持ちが強い文化」

 その上で、「日本の死亡者の少なさは世界からは『奇妙な成功』」などと書いている。これは事実とも異なる異様な記述だ。日本は欧米に比べれば確かに死亡者数は少ないが、アジアの中では平均よりも悪いのが現状だ。

 実態のファクトを捻じ曲げ、「日本はすごい!」「日本は素晴らしい!」と連呼する、あらかじめ結果の想定されたノンフィクション。コロナ関連書籍といいながら、アベノマスク批判も出てこない奇妙な書だ。

読者はこの本の書き手の意図が別にあることを、よく弁えるべきだと考える。

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