1990年代を20代から30代として過ごした世代からすると、時代がこれほどまでに反転するとは予想がつかなかった。反転とは、政治的な意味でいう、左から右への傾斜のことである。90年代は俗にリベラルな時代とされ、戦争責任についても比較的まじめに対応した。それが壊れるのは、やはり55年体制の崩壊、日本社会党の消滅によるバランスの変化に対応できなかったという感が強い。要するに左翼の力のなさが現在の状況を招いたとも思える。私が社会新報の記者時代にバングラデシュを取材したとき、日本大使館の公使という立場の人物と会食したことがある。そのとき私の目の前で「日本を悪くしたのは社会党だ」と平然と言い放つ姿をまじかに見て、この人はいったい何なのかと思ったことがあったが、いまごろになってその言葉の意味を感じ取る。社会党が政権党である自民党といつでも政権交代できる程度の気概と実力を兼ね備えていれば、日本の針路は大きく変わっただろうという意味だったと感じる。結局のところ社会党は自民党と慣れ合うだけで、ほんとうの意味での大衆の側に立ったビジョンや体質を持ち合わせていなかった。リーダー不在。社会党の凋落は、結論としてそう言えるのだと思う。結局は力ある人材の存否に尽きる。