昨日付の産経などが1面で報じたところでは、ベストセラー『知的生活の方法』などで知られる渡部昇一氏が17日死去した。享年86。新聞では特オチしたメディアも複数あって、昨日の夕刊でフォローしたところも多い。同氏は月刊『WiLL』などでも重用され、右派論客の中心的存在とみなされていた。それでいて同じ右派系の学者からは「どこにでも口を出すお座敷芸者のような人物」という悪評もあった。事実、南京大虐殺では、虐殺はなかったという、史実とは明らかに異なる主張の運動の責任者を務めていた。学者でありながら、史実を踏まえないで言いたいことだけを主張する態度が、史実を踏まえて主張を構築しようとする「まともな学者」からすれば、同じ右派論客であっても、鼻についたに違いない。昨日付の産経新聞は社会面で、櫻井よしこ氏が「かけがえのない存在」とベタ褒めした。「偽物」「まがい物」が大手を振って闊歩する現代社会にあって、事実に立脚する姿勢を≪放棄≫した象徴的な文化人であった。