大宅壮一ノンフィクション賞からリニューアルした第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞に、森功著『悪だくみ~「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)が選ばれたと各紙で報じられている。当コラム日記でも、たまたま4月7日付で取り上げた。今も旬の題材である「加計学園」問題についてなされたまっとうな調査報道だけに、この受賞はむしろ喜ばしい。
近年、ただ単に安倍首相やその政治路線を持ち上げるだけの『WiLL』『Hanada』などの大政翼賛雑誌が大手を振っているこの国の言論界にあって、文芸春秋社がそれと異なる路線を歩んでいることはよく知られる。上記の書籍はその象徴とも感じられるもので、本日発売の月刊『文藝春秋』でも森氏によるインタビュー記事が掲載されている。
ジャーナリズムが一方に流されず、権力を抑制・監視するための一角として機能している一つの証明だ。
それと対照的なのが、同じ週刊新潮編集部に在籍し、森氏と同じころに独立し、仕事をしている門田隆将こと門脇護氏であろう。こちらは上記の大政翼賛雑誌のメイン(?)ライターの一人であり、安倍首相にからむ問題についても、黒を白といいくるめるかのような言論活動を平気で行ってきた。ちょうど戦中、時局になびいた翼賛記者が戦争遂行を賛美したのと似たような現象に思える。戦後になって過去を冷静に振り返ったとき、そうした迎合記者が評価されず、むしろ侮蔑の対象となったのと同じように、同人の行動は今後、歴史によって裁かれるものと当方は見ている。
ともあれ、現在の文藝春秋社の路線は、「異常さ」があふれる日本の言論界にあって、一つのまっとうな軌跡に映る。