トランプ大統領が報復していない国を対象に相互関税の90日間停止を宣言した旨のニュースが流れている。現状、世界中が一人の人物に振り回されている。日本にも百田尚樹や立花孝志のような“ミニ・トランプ”とみなされる人物は存在するが、島国の小政党の党首にすぎない存在と、世界最大の軍事力を行使する大国のトップとでは、その影響力はまるで異なる。何度も繰り返すとおり、トランプ大統領は正真正銘のサイコパス(=良心の呵責をもたない異常人格者の類型)に当たる。サイコパスが「気まぐれ」な気質をもつことは、ロバート・ヘア博士の著作にも書かれている。私がヘア博士にインタビューしたのは2002年。カナダ・バンクーバーのホテルで2日間かけて取材を行ったが、博士のパソコンに入ったサイコパスと診断された人物の脳内状況と一般人のそれとを比較した画像を多く見せてくれたことを鮮明に覚えている。要するに脳の働き方が一般とは異なっていることを証明するためのものだったが、結果的にそれが良心の呵責の有無をより分けるものだったともいえる。サイコパスという類型は定義がそれなりにはっきりしていて、きちんと勉強すれば、その人物像が明確に立ち上がる。繰り返すように、トランプ大統領はその人物像の「典型」の姿なのだ。ヘア博士はカナダの第1級の研究者だったが、アメリカの矯正施設でもこの概念は取り入れられ始めているころだった。ただし現在のアメリカの犯罪心理学や精神医学の世界で、このサイコパスの概念が用いられている形跡は少ないようだ。むしろそれがきちんとなされていて、米国社会の共有情報になっていれば、同氏が再び大統領に就任する事態は生まれなかったかもしれない。