身体操作の科学

世界には古来多くの格闘術が発達してきた。中国福建省から琉球王国にわたり、その後日本本土や世界に広がった日本国が誇るべき文化「空手」もその一つだ。だが、その空手だけでも多くの流派が存在し、技術的には細分化されている。ただし二本足で歩行する人間の身体的特性や物理的制約から、人間の骨格上、効果的な身体的攻撃などは一種の普遍性を伴うことが多い。空手の別の流派であっても、考え方に類似する点が出てきたり、空手以外の異種格闘技(たとえば合気道など)とも共通する点が生まれるのは興味深い現象だ。およそ30年前と比べ、いまの環境を変えたのはやはりIT技術の進化だ。動画拡散が容易になったため、それまでならマンガや書籍、せいぜい映画で確認するのがすべてだった手段が、いまではスマホを見ながら「動画」で簡単に確認でき、さらにそこから多くの触発を受けることができる時代となった。空手の各流派も「一つの体系」としての武術哲学をもつ存在といえるが、これからの武術指導者はやはりその哲学を説明できることが必要要件の一つになると感じる。「これがうちの伝統だから、先生の言う通りにしなさい」では、生徒がついてこれない時代になっていくと思われるからだ。「なぜそうしなければならないのか」「なぜそうしてはいけないのか」。人間の骨格構造などを背景に、きちんと説明できることが空手指導にも必要な時代と感じる。

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