AIと翻訳

空手関係の書籍の英訳作業を進めている。昔と違うのは、いまでは書籍1冊分の文量でもわずか数分で全翻訳が完了することだ。やってくれるのはAI(人工知能)である。それでほぼ8割方の完成度の翻訳文ができあがる。ただし機械が行う作業なので、固有名詞の間違いや、意味の取り間違い、翻訳の抜けなど、小さなところでさまざまな問題が発生するので、それらをチェックするのがこちら側の作業になる。不思議なことに人名などの固有名詞でも最初は正確に訳出していたのに、その次には別の呼び方をするなど一貫性がないのは、統一的な機能がなく、その場その場で瞬時に翻訳していった結果だろう。さらに日本語は主語を省略することが多い言語なので、英語に変えた際、主語が別の人に変わっていることも少なくない。それでも昔はこれらの作業を1からスタートしていた労力から比べれば、各段に仕事が楽になったことは確かだろう。書き言葉や読み言葉に関して「言語の壁」の垣根が格段に低くなっている事実は驚くばかりだ。ライターの仕事も将来はAIに取られてしまいかねないという話もあるが、その一部は代替される可能性が十分にあるものの、おそらく全部は無理だろう。やはり人間の脳にしかできないことは残るからだ。お陰で大学受験以来さびついていた英語の感覚が、多少なりとも戻ってきた気がするのはこの作業がもたらした副次的な産物だった。

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