売上高1000万円以下の小規模零細事業者の「事業者免税点制度」を廃止するインボイスが本日から開始される。1988年、竹下内閣のもとで成立した消費税法では、消費税の導入にあたって中小零細業者への配慮がなされた。売上高1000万円以下(当初は3000万円)の事業者については、消費税の納税義務を免除するもので、配慮措置の一つとされた。以来、35年がすぎる。政府がインボイス制度をゴリ押しするのは、将来、消費税を15%、20%に上げる際に、現状を放置していては取りはぐれる額が増えるからだろう。実際、今回この中小業者に課税しても2000億円程度の税収増にしかならない。もともと「益税」が発生する状態は税制の公平性からいえば偏りといえるが、そもそも消費税導入の際の約束を35年たって「反故」にするからには、それなりの説明と納得が必要だが、それははなはだ不十分に思える。打撃を受けるのは、収入の少ない庶民層であり、多少の経過措置を設けたところで、それは焼石に水というものだろう。民主党政権時代の野田首相は昨日付の朝日新聞で異論を述べていたが、政府は将来、消費税を上げることを見越した措置であることをあえて述べていない。これでは国民に不誠実な騙し討ちのようなやり方と言われても仕方がないと考える。