日本共産党広報部の態度

20代のころ夕刊紙の仕事で、一部上場企業の人事部長を紹介するコラムを担当したことがある。一般企業の取材の窓口となるのは、広報部である。多くの広報部と接触することになったが、広報はその会社の「顔」だ。その際のやり取り、心遣いなどすべてがその会社の印象となり、評価にも結び付いていく。これは企業も団体も同じである。もちろん政党にも広報部は存在する。表玄関から取材を申し込むときはこのルートを踏むことが多い。

 一般の私企業と異なり、政党は公の側面を色濃く持つ。政治は常に批判されることを前提とする分野でもある。私は日本共産党を比較的長く取材してきた一人だと思うが、この政党の現場の地区委員会、さらに関連団体として複数地域の民商を取材したことがあるが、印象は極めてまともなものだった。要するに、取材には「応じなければならない」という姿勢が顕著であり、それを忠実に実行していたからだ。最近、同党は「日本共産党の100年」というタイトルの文書をトップの委員長自身が記者会見を通じて公表し、その内容を読みたいと考えた私は、まずは正式ルートで同党広報部に電話をかけ、入手したい旨を告げた。そのとき伝えたのは「フリーライターの柳原」である。電話をとった女性広報部員は「検討して折り返し連絡します」と述べ、いったん電話を切った。かかってきた電話はいずれも「非通知」で、とった電話に「すでに残部が少なく、提供できない」と断ってきた。私は現物が欲しいわけではなく、内容を記者として確認したいのだからコピーでもいいからほしい旨を伝えたが、その後連絡はなかった。翌日、同党を訪問し、本部受付で購入したい旨を告げると、受付の女性が「柳原さんにはウエキ(※同党の広報部長名は植木俊雄)さんから……渡すなと…」と口ごもった。私はまだ自らの名前を何も伝えていないのに、受付の女性が私の名前を特定・断定して呼んだことに驚きを感じた。中から男性の広報部員が出て来て、直接交渉となったが、全国の同党組織で280円でこんご販売することを告知していること、政党の発表物を特定の記者にのみ渡さないという姿勢は公正な対応とはいえないことなどを告げると、ようやく渡してくれた。

 このやりとりを通じて感じたことは、この党が政権内に入ったときは、同じようなことが露骨に行われるだろうという確信だ。口ではどのような綺麗事を言っても、自分を批判する者は遠ざけ、ほめるものは認める。人間のさがといえようが、主張と行動の落差にがっかりした思いがした。後で感じたことは、委員長自身が鳴り物入りで広報した「日本共産党の100年」の内容に、同党の広報部自身が自信を持てなかったのだろう。自信があるなら、このような対応にはならないはずだ。自分でもその内容にやましいものを感じ、そのやましさを指摘する相手と捉えたからこそ、露骨に遠ざけようとしたとしか受け取れない。帰宅してこの文書を読んでみると、内容には多くの虚偽がまじっていた。読ませたくない理由は明白と思えた。

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