栗山監督の哲学

WBCの日本優勝を契機に栗山英樹監督が2019年に出した『稚心を去る』というちょっと変わったタイトルの本を手にした。同監督が現役時代に花が開かなかった元プロ野球選手という言い方はしばしばなされるようだが、一方で監督としてのリーダー論にも注目が集まる。同監督が野球のリーダーとしてのヒントを得るために本を貪るように読んできたこともあらためて知った。その中で監督の紹介している「稚心」(ちしん)とは、子どものようなわがままな心のことで、それは大人の心・振る舞いと対比される。

もともとは幕末の人であった橋本左内の言葉として紹介され、人間の成長を妨げる要因こそ「子どもっぽい心」と指摘する。それはそのまま「わがまま」を意味し、調子がよくないときなどに人のせいにする心理などを指している。一方で対比される大人の心は、人のせいにせず、原因を自分に求める心理作用などを指す。監督によれば、「結果が出ていれば、自然と『大人の心』が出てきて、誰でも『チームのために』となる」「結果が出て、みんなが気分良くやれているときは、驚くほど『大人の集団』。難しいのは、結果が出ていないときにどうやって『大人の心』を引き出すか、きっとそれを引き出すのが、監督の仕事なんだと思う」ということになる。結論として、「『稚心を去る』、これがすべてだ」と書き、それがそのまま本のタイトルになっている。万般の哲学にも通じる重要な指摘と感じられた。

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