通州事件を利用する人びと

日中戦争が始まって80年。最近「通州事件」という名称をよく目にするようになった。主に南京虐殺を否定したい人たちが、実は日本人が中国人に虐殺された事件があったとして使う傾向が強い事件である。つまり、中国人も似たような事件を起こしていたのだから、南京虐殺も免責されるとの意図が隠されていることは明白である。だがこの事件の規模は、南京虐殺のそれとはまったく異なる。昨日付の東京新聞特報面でも取り上げられていたが、この事件による犠牲者は日本人114人、朝鮮人111人という。一方の南京虐殺は、数万人の単位であり、規模はまったく異なる。規模がまったく違うのだから、通州事件は大したことはないというつもりはないが、歴史の事実としては、綿密に区分けする必要があるだろう。

通州事件の存在をもって、南京虐殺を打ち消そうとする意図自体、動機として正当なものとは捉えられない。こうした事実の打ち消し、責任回避の姿勢が日本側に存在する限り、相手国が延々とこのテーマを持ち出すことに対抗することはできない。

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