性暴力認定男性が新潮社を訴えた裁判

伊藤詩織さんが2015年4月に酩酊状態のままホテルに連れていかれ、合意のないまま性暴力を受けたことを原因とした民事裁判は本人を原告に2017年9月に提起され、2019年12月に1審判決、2022年1月に2審判決が出て、加害者が酩酊状態にあって意識ない女性に対し合意のないまま行為に及んだ事実をいずれも認定した。今年7月には高裁判決が最高裁で確定した。この事件の加害者で同裁判被告の山口敬之氏はいまも悪びれず活動を続ける。

この問題を本格的に最初に報じたのは「週刊新潮」で、2017年5月に第1報となる「被害女性が告発! 『警視庁刑事部長』が握り潰した『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦逮捕状』」を掲載。以後、2020年に至るまで合計20回以上にわたり続報をつづけた。これらの報道に対し、山口敬之氏は2020年4月、新潮社および週刊新潮担当者らを名誉毀損で提訴する挙に出て、いまもこの裁判が続いている。裁判はまだ人証申請にも至っていない段階のようだが、筆者はこの裁判を重要な意味をもつものとして注目してきた。

なぜなら山口氏は事件後に、「北村さん」宛に対応を相談するメールを誤って週刊新潮に送っており、外国特派員協会の記者会見でその人物について尋ねられた本人は「(北村氏は)弁護士であった父の友人」と主張している。この北村氏について、安倍政権の中枢にいた北村滋氏ではないかとの声が根強いからだ。

この裁判では驚くことに、私のサイトの記事が複数、山口敬之側の証拠として勝手に提出されていた。もちろんいちいち本人の了解をとらないといけないという法律はないのであろうが、当方が過去に信平狂言訴訟に関して当時の週刊新潮報道のお粗末ぶりを指摘した一連の文章が使われていた。

もともと信平狂言事件は門脇護(門田隆将)というオソマツな記者が裏付けもなくキャンペーンを張ったことが原因で起きた問題であり、現在の週刊新潮編集部とは本質的に関係がない。しかも門脇護が弁護士まで紹介して起こさせた信平信子らの裁判は「訴権の濫用」として却下されており、およそ事実的根拠がないものとして司法から認定されたいわくつきのものだ。一方で同じ強姦疑惑を指摘する記事といっても、山口氏の民事裁判では多くの証拠をもとに「クロ判定」が司法において確定した。そもそもの成り立ちがまったく違うことは明らかだ。

本件裁判は、門脇の過去の行状を一層浮き彫りにする可能性があるという点でも注目される。

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