KADOKAWAの二重基準

本日付の産経新聞に出版社のKADOKAWAがある人物の著書を絶版・回収する措置を決めたという目立たない報道があった。14日に報道された幻冬舎新書において共同通信記事を大量に盗用したことが報じられていた今井良というジャーナリストの著作で、3冊目の処置という。わかりやすく図示すると以下のようになる。

   『内閣情報調査室』(幻冬舎新書)

   『テロVS日本の警察』(光文社新書)

   『風俗警察』(角川新書)

 いずれも、共同通信記事からの盗用が発覚したというものだが、まだ裁判になった事案でもない。共同通信社側から指摘がなされ、各出版社が自社で調査の上、絶版と回収を明らかにした事例だ。これとほぼ同様の事例として、門田隆将こと門脇護が過去にある女性の執筆した著作から大量盗用し、裁判ざたになった事件がある。こちらは東京地裁、高裁、最高裁と日本の司法で審理され、最終的に14カ所で盗用が認定され、裁判所によって販売が差し止められた。このような決定を裁判所から受けたジャーナリストは、私の知る限り、日本に現存しない。わかりやすく図示すると、以下のようになる。

   『風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故』(集英社) 司法から廃棄命令

   『康子十九歳 戦渦の日記』(文藝春秋) 多くの盗用を指摘されている

   『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社) 多くの盗用を指摘されている

 いずれも2009年と2010年の作品に集中しており、同人が2008年に新潮社から独立してまもないころの作品ばかりである。ちなみに、『康子十九歳』は現在も文春文庫で販売されており、『この命、義に捧ぐ』は角川文庫から、いまも絶賛発売中だ。

 共同通信記事から出典を明示せずに本文に入れ込んだ行為を「盗用」として処分されたジャーナリストの現状に比べ、同様の行為を行い、すでに1件は最高裁で明確に断罪されているジャーナリスト・作家が、ほかの複数の作品でも同様の行為を指摘されているのに、文藝春秋もKADOKAWAもなしのつぶてだ。特にKADOKAWAは二重基準といわれても仕方がない。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。