昔、戦争をすると新聞が売れた。そのため新聞は戦争を煽る道具と化した反省がある。明治から昭和にかけての日本の新聞メディアの大きな反省点だ。戦後75年以上すぎるいまは、特段、戦争そのものはないものの、過去の歴史を都合よく捻じ曲げ、国民の愛国感情を刺激しながら、部数売り上げにつなげようとする新聞がある。日本では「産経新聞」がその典型例にあたる。過去の日中戦争のときに南京陥落という事態が生じたとき、日本軍が多くの蛮行を行った。大量殺戮、大量レイプがよく知られるが、総称して「南京虐殺」「南京事件」などと言われる。この歴史的事実について、日本の全国紙の中で唯一「なかった」と主張するのが、産経である。この点、右派系列の読売は「あった」と、歴史学会で確定している事実を否定することはない。産経は、歴史学会で確定している事実ですら根拠もなく勝手にひっくり返し、事実と関係なく日本の国民世論に影響を与えようとする政治的意図もった新聞であることを理解しておく必要がある。佐渡金山の世界文化遺産登録問題でも、産経は、「韓国との歴史戦」(本日付産経)と位置づけ、新聞社自ら歴史戦の当事者になっているのが実態だ。だがこの問題が争点となっているのは、戦前・戦中に朝鮮半島の人びとを強制労働させたかどうかという一点において日韓両国で主張が衝突しており、韓国側は「あった」、日本政府側は「なかった」と主張し、こじれている。だが歴史的な事実からすれば、日本政府の主張は真実とは言い難く、苦しい言い逃れに終始しているのが実態に見える。本日付の久保田るり子編集委員による記事はその典型例だ。新聞が政治の一部勢力に同調し、事実(ファクト)を都合よく塗り変えるのは勝手だが、戦前の戦争翼賛新聞と何が違うのかという気がしてならない。