7月開催の東京オリンピックにおいて初めて正式種目となった空手は、琉球発祥の武術である。ただしもともとの影響は中国と日本からもたらされた。中国・福建省から伝わった武術と、日本の剣術・柔術などの武術が沖縄の地で融合し、独自に土着化したものといってよい。その意味では、日中文化の融合にほかならない武術が本来の空手なのだ。中国の習近平国家主席は以前は福建省長を務めた経歴があり、その時代に公式に沖縄を訪れたことがある。昨年、空手関連の取材で稲嶺恵一元知事のオフィスを訪ねた際、当時の写真が飾ってあるのを目にして感慨深く思った。一方、日本の菅義偉首相は法政大学の学生時代に空手に打ち込んだ経歴をもつが、流派は剛柔流(渡口系)だ。もともと空手は那覇手と首里手に大別され、那覇手の範疇に入る剛柔流は、中国武術の影響が大きい(首里手は日本武術の影響があるとされる)。つまるところ、現在の日中首脳間には、こうした文化的な縁がある。近隣国家として、古来から緊密な文化交流を行ってきた日中両国。空手はその象徴の一つだ。