名誉棄損裁判のこわさ

他人に意に添わぬことを書かれて立腹し、相手を名誉棄損で訴えるというのはよくある話だ。だが名誉棄損裁判は“諸刃の剣”であることを弁えなければならない。例えば誰かにキチガイと書かれて相手を訴えた場合、訴えた自分が勝訴すれば「キチガイの指摘は当たらない」との認定結果となるが、もし負ければ、「キチガイと言われても仕方のない人」であり、“司法公認のキチガイ”となってしまう。負ければ自分が倍以上の損害を受けることになりかねない、実は危うい手段なのだ。この墓穴を見事に掘った事例が昨日報じられた。明治天皇の玄孫を名乗る男性が「差別主義者」とSNS上で書かれ、発信者を名誉棄損で訴えた民事裁判の1審判決が昨日東京地裁で言い渡された。ここでその原告が敗訴したからだ。まだ1審段階ではあるが、訴えた側が逆に「裁判所公認の差別主義者」となってしまった。似たような事例は過去にもある。東京・東村山市の男性市議が昔、パラノイアと指摘されて名誉棄損で訴えたことがあった。だが裁判所はこの市議を敗訴させ、事実上、「司法公認のパラノイア」とされてしまった実例がある。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。