中国は日本の敵なのか

「中国は敵だ」。こうした声を発信するのは右翼陣営に多い。尖閣列島への主権侵害行為を日々聞かされている日本国民にも、似たような感情を持つ人たちが増えている。中国は習近平体制になって毛沢東独裁体制に“先祖返り”していることが指摘されるが、だからといって「敵」というレッテルをはって、それを煽り、対立を固定化させる言説にはいささか疑問を感じざるを得ない。日本が中国とケンカして特になることは、双方においてまったくないからである。要するに、両国はつねにウインウインの関係でなければならない。隣国として密接な経済関係をもち、それは切ることのできない関係である。日本は民主主義国家の陣営の中にあるが、中国は共産主義という独裁政治体制の下にある。広大な国を統治するには、民主主義の原理では国家崩壊に結びつくと恐怖した当時の政治指導部が、その後、「反日」を国民統合の手段として利用して現在にいたる。だがそこに住む人々は日本社会に住むのとまったく同じ人間なのだ。この人間という視点を見失うと、国家と国家のエゴイズム、ひいては「中国敵論」の術中に陥ってしまう。もはや現代は一国で非民主主義的な行動をゴリ押し出来るような時代ではない。そんな国家は多数の民主主義国家に包囲され、身動きとれなくなることは明らかだ。また中国の民衆もそれがわからないわけがない。右翼陣営からしばしば強調される「中国脅威論」を、額面どおり100%そのまま受け取る必要はない。指摘の一部は肯定しても、その方向性には明らかな誤りがある。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。