小説とノンフィクションの境い目

学生時代、ノンフィクション研究会というサークルに所属した。柳田邦男や沢木耕太郎、鎌田慧といった人たちの作品を読んだり、直接本人に会いに行ったりした。それでいてこれまでちゃんとしたノンフィクション作品を書いたことは一度もなかった。現在、ある人物を調べて書くつもりで準備を進めているが、取材はやってもやっても限度がない。厳密に調べようとすればするほど、まだこれも足りない…あれも足りない…などと際限がないからだ。たぶん小説でも、一人の人物を中心に描く場合、何らかの取材は一定程度必要なはずだが、おそらく小説ならこのへんで取材を終え、残りは想像で書くことが許される段階に来ていると思う。だがノンフィクションではそれができない。調べて調べて、限度まで調べ上げて、その上でそこから溢れ出たものを躊躇なく捨てる。それがいいに決まっている、と頭ではわかっているこの頃だ。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。