５月３日、櫻井よしこが代表を務める憲法改正の集会の場にたまたま居合わせた。そこで安倍首相がビデオメッセージで、日本会議系列の参加者に向けて、２０２０年オリンピックの年に憲法９条改正施行（３項加憲）を打ち上げた。先に同じ内容を読売新聞にリークし、同日付の１面トップで取り上げさせるという用意周到なものだった。３項は、自衛隊の存在を憲法９条に位置づけるというもので、現状追認を明文化するに等しい。だが、同じ自民党内からさえ、これまでそんな議論はしていないとの声が出ている。

もともとこの提案が、民主党の分裂を誘うことが主目的であるならともかく、首相の悲願である憲法改正、中でも本丸の９条に何らかの足跡を残したいとの個人的な動機から出たものであるとするなら、状況認識が甘すぎるというしかない。

公明党はもともと加憲の立場であり、条文の字面でいえば、大きな反対はないかもしれない。ただ自衛隊を合法的に明記するにしても、これは９条改正にほかならない。さらに第２項と第３項の関係の矛盾は、そもそも解消されない。

安倍内閣のもと、これだけ右傾化・軍国主義化・情報統制化・教育勅語推進化が進む中で、あえてこの時期に、９条に踏み込むことは、時代環境をさらに大きく≪悪化≫させることにつながりかねない。

ただでさえ、反知性主義的な言論がまかりとおり、嫌中嫌韓的な言説が拡大し、社会状況が悪化するばかりだというのに、ひとりの首相のメンツのために、こんなことに「加担」する意味はほとんど存在しない。少なくとも、安倍内閣が終了し、次の新たな内閣の下で、冷静に議論できる環境がそろったときに、初めて俎上にあげるべき事柄だと考える。

私は安倍内閣のもとでのこの種の改正には、明確に反対したい。