空手雑感 30

沖縄で空手の取材を続けていて印象深い出会いも生まれた。ある空手家から言われた一言はいまも忘れられない。「音をたてて歩くな」。武人たるもの、足音をたてる人間は素人に等しいとみなされるという。例えば板張りの上を歩く場合、人間の歩行はかかとから降ろすと自然と足音がする。一方音をたてないで歩くにはつま先から降ろす必要が生じる。自分の位置情報を不必要に周囲に知らせてはいけないというのは、琉球時代の武人のたしなみのようなもので、その精神を受け継いでいるということだろう。その話を聞いて以来、板張りの上を歩くときは、なるべく足音をたてないように注意するようになったのは我ながら不思議である。

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