伊藤詩織事件の意味

昨日東京高裁で泥酔状態にもかかわらずホテルに連れていかれて同意なく性行為をされたと訴えていた女性の起こしていた民事訴訟の2審判決が出て、本日付朝刊で報道されている。1審では女性側が完全勝訴し、330万円の賠償金を勝ち取っていたが、2審の判断も維持された。最高裁では原則事実審理を行わないので、このまま判断は変わることなく、最高裁で確定することになると思われる。

この問題はTBSのワシントン支局長を勤めた男性と、支局のインターンを希望した女性が酒を飲み、酔って動けなくなるほどの状態だったとされる女性をホテルに連れていって行為に及んだとされるものだ。こうした職業的な地位の差を利用した暴行は、どのような世界でも起こりうる問題といえるが、この事件が脚光を浴びることになった理由はそこだけではない。暴行男性が安倍元首相と親密な関係にあり、元首相を持ち上げるための書籍を2冊も刊行しており、その結果、政治権力が動いて、女性の告発による逮捕状を逮捕直前で握りつぶした疑いまでもたれているからだ。暴行男性が安倍元首相を持ち上げる書籍を発刊した時期は2016年6月と17年1月。この女性との事件が起きたのは2015年4月で、同月に女性は警察署に告訴状を提出。捜査は逮捕直前まで進んでいたとされるが、直前になって、差し止められた。結局、不起訴処分となったのが翌年7月のことだった。この間、2016年7月に参院選挙が行われている。周知のとおり、前年の2015年9月に安保関連法が成立しており、そのダメージを受けた安倍政権にとって翌年夏の参院選での勝利は必要絶対条件となっていた。その時期に発刊された安倍ヨイショ本の著者が、レイプまがい行動の張本人だったということになれば、明らかに安倍首相自身に傷がつく。そのように元首相本人が判断したのか、周りが先に動いたのかは不明だが、結論として、警察を中心とする行政機関が「忖度」して動いたことは客観的にみて正当な物の見方にみえる。

安倍政権が自分たちの政権を守るため、レイプまがい行為を行った「アベ友」の悪行を権力を使って握り潰した。その図式が一向に晴れないことが、実際の事実関係以上に、この事件が注目されることなった理由である。

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