沖縄への愛

次の首相になることが有望視されている菅義偉官房長官は法政大学の学生時代、空手に打ち込んだことで知られる。現在も「空手道推進議員連盟」の会長を務めているはずだ。ネット上の情報で確認すると、流派は剛柔流。ただし渡口政吉の道場に通ったという情報があるから、沖縄剛柔流ということになる。剛柔流は日本本土と沖縄の双方にあり、微妙に異なる。剛柔流ももともとの発祥は沖縄だ。私はこのほど『沖縄空手への旅』という書籍を上梓する(9月14日発売)。空手の発祥が沖縄にあることは、空手愛好家ならほとんどの人が知っている。また沖縄県人は空手をやっていなくても、みなわかっている。一方、日本本土の空手と縁のない人はその事実をほとんど知らない。菅官房長官は空手の発祥が沖縄にあることはよく知っているはずだ。私は沖縄の空手を取材すればするほど、その発祥の地として、歴史的に敬意を表する立場となった。また沖縄の空手も、さらにその大元の源流は中国大陸にある。中国人の武術家が沖縄に伝え、それが沖縄で土着化されたものが「空手の源流」であったからだ。その意味では、文化的経路としては、仏教とも似た側面がある。時代は異なれども、文化を渡してくれた対象に対する素朴な親愛の情、敬愛の情ともいうべき気持ちのことだ。現在の私の沖縄に対する思いはそんなところに宿っている。菅官房長官は沖縄に対し、これまで国家の論理で冷徹な行動を示してきた。首相になったからといってその方針が簡単に変わるとは思えないが、辺野古の工事はすでに設計段階から破綻していることが明らかになっている。廃止でなくとも、任期中はとりあえず工事を「停止」したらどうだろうか。

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