反知性主義という言葉がある。歴史を事実に基づいて見るのではなく、自分のいいように都合よく見る見方のことだが、この言葉は何も安倍首相だけの専売特許ではない。日本共産党にもそのまま当てはまる。たとえば志位委員長が直近のテレビ番組で語った以下の言葉も、反知性主義を象徴するものだ。「1950年当時、ソ連・中国による干渉で党が分裂していた時期に、一方の側が間違った行動をとり、その後、党を統一した際に、誤りだったと否定した」。どこに誤りがあるのか。一つは党がソ連と中国によって分裂させられたと言っているところだ。周辺の環境の影響がどうであれ、分裂した主体は当時の日本共産党である。仮にソ連や中国の影響がいかに大きかったにせよ、自分たちの努力によって分裂を回避できる可能性はゼロではなかったはずである。このように自らの責任を皆目認めることなく、他者に責任転嫁する手法は、子どもなどに顕著に見られる現象で、「〇〇ちゃんが悪い」などと親に説明する姿と何ら変わるところがない。また分裂した一方の側が善(=いまの共産党)、もう一方の側が悪(徳田球一一派)との立て分けも、事実とは異なる。当時徳田側にいた野坂参三は何ら自己批判することなく、戦後の同党のシンボル(トップの役職)であり続けた。彼らの言葉でいうところの「間違った行動をとった」人物を重用し続けたのは、実は現在の日本共産党自身である。その結果責任を免れることができるはずもない。以上のように、日本共産党の歴史を見る態度は、反知性主義の権化のようなものである。