◆門田隆将5 取材しないで発信する

私がこの門田隆将という人物と初めて空間を同じくしたのは2014年11月のことである。日本会議の活動母体ともいわれる日本青年協議会が主催した講演会をたまたま覗いたのがきっかけだった。この日の演題は「大東亜戦争を戦った日本人の気概」。場所は靖国神社の遊就館の一室だった。ここで門脇は、東電原発事故の吉田昌郎所長の取材にたどりついた裏話などを披露するとともに、いつもながらの朝日批判を展開し、「なんで事実を捻じ曲げてまで、日本と日本人を貶めたいのですか」などと述べていた。その上で慰安婦問題にも言及し、「ありもしない強制連行」「強制連行というのは、無理やり女性を戦場に連行したら拉致、そして慰安所に閉じ込めたとしたら監禁、そして意に沿わない性交渉を強いたら強姦。朝日新聞は日本だけが悪い論を掲示するたびに、日本人は拉致・監禁・強姦の加害者であると書いた」と、新聞がまるで事実と無関係なデマを書いているとばかりに発言していた。当時、私は慰安婦問題についてたまたま取材を始めており、突然出てきたこの発言を注意深く聞いたが、結局、この人物は「取材者」でありながら、何も取材しないで勝手なことを述べているだけだということがよくわかった。なぜなら門脇のこの発言は、対韓国を前提に語られているものの、ちょっと慰安婦問題を取材したことのある者からする、門脇の定義した「拉致・監禁・強姦」の行動は、中国大陸やフィリピンなどでは「実際にあったこと」として、すでに確定している事実だったからだ。日本軍は明確に、拉致・監禁・強姦を行っていたのである。結局、韓国でそのようなケースがまだ未確定なだけで、ことさら問題を矮小化するために、このように話をはぐらかせているとしか思えなかった。以上はエピソードとしての一例にすぎないが、歴史的経緯を含む重要な社会的テーマについて、自身できちんと取材したわけでもないことを訳知り顔で語る姿は、この人物の一つの特徴でもある。自己顕示欲が強く、功名心旺盛で、目立ちたがり屋。まともに「取材」もせずに事実に正確ともいえないことを平気で語る同人の姿は、現在も変わりない。しかも自分たちの特殊なイデオロギーを背景にしているので余計にやっかいだ。

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