志位和夫の描く未来社会は虚妄そのもの

 『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』と題する新書を手にした。著者は元NHK記者で、90年にフリーランスに転じてからはドイツ在住で仕事をしている。その本によれば、ドイツ人の労働時間は、OECD加盟国の中で最も短いという。大きな理由は、労働法のあり方にあり、ドイツでは1日10時間を超える労働は法律で禁止されているという。ドイツ人一人あたりの年間労働時間は1356時間であるのに対し、日本人のそれは1710時間(2017年のデータ)。つまりその差は354時間で、1日10時間で計算しても、優にまるまる一カ月分は、ドイツのほうが労働時間が短いことになる。

 なぜこんなことを書くかというと、日本共産党の志位和夫委員長が昨年10月に行った講演で次のように語っていたからだ。「共産主義社会では、労働時間が抜本的に短くなる。搾取がなくなり、社会の構成員がすべて働くようになる。浪費がなくなる。生産力が発展する。そうして労働時間が抜本的に短くなり、自由に使える時間が長くなります。人間の持っている潜在的な能力――例えば学者、アスリート、芸術家などの素質をもっていても資本主義のもとでは埋もれてしまう人が多い。すべての人間の自由な全面的な発展をめざすのが、私たちがめざす社会です」。さらに昨年12月にはベトナムでも、社会主義になれば「労働時間は1日3時間や4時間で済むような社会になることも可能」と語っていた。

 志位氏はかつての社会主義国でそのような「夢の国」があったのなら、具体的に示していただきたい。かつて社会主義の実験は無数になされてきたのであり、もし示すことができないのであれば、かつてソ連や北朝鮮を「地上の楽園」のように描いてきた同党の虚偽体質は、何ら変化していないことになる。 上記のドイツや日本の労働時間のデータでいえば、ドイツの1日あたりの平均労働時間は3・7時間、日本でも4・6時間だ。わざわざ日本を社会主義にしなくても、すでに志位委員長のめざす労働時間につながっている。ましてドイツも資本主義の権化だ。日本共産党の描く未来社会そのものが「空想」の産物と言わざるをえない。

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