どこまでも「国賊」としての行動をとる産経新聞

昨年10月、日本テレビ系で「南京事件 兵士たちの遺言」というドキュメンタリー番組が放映され、さまざまな賞をとった。現代日本の世相を反映し、揚げ足取りをされないように入念に確定的な事実のみに依拠して作成された調査報道作品である。これに対し、南京虐殺はあくまでなかったと思い込みたい新聞として知られる産経新聞が、番組で使用した写真1点について難クセをつけ、現在、日本テレビと産経紙上でバトルが展開されている。本日付の産経新聞紙上に、またその瑣末な指摘の記事が掲載されていたので取り上げる。
昭和12年12月を中心とする南京(虐殺)事件において、日本軍が万単位の違法殺戮を行ったことは歴史学的に確定している事実だ。それらは中国人側の被害証言のみならず、当時、現場にいた各国の大使館関係者、報道関係者の証言をはじめ、加害側の旧日本軍関係者の日記や部隊の公式記録からも裏づけられている。正確な殺害人数については確定的なものは存在しないものの、控えめに見積もる中間派とされる学者で4~5万人、一般には10万人程度とも見られている。
先の大戦で中国人の戦没者が1000万人ともいわれ、日本人の戦没者も310万人に及ぶ。そのうちの「10万人」は数字上から見る限りは小さな比率にすぎないが、この問題が事件から80年近くたった今も「政治的な問題」であり続け、さらに中国側の外交カードとして用いられる主な原因は、日本人側に当時の感覚とさほど変わらない者たちが存在するからである。
本来であれば、歴史学上の事実関係を認め、素直に「戦争中のことであり申し訳なかった」との姿勢を貫けば、およそ問題にも浮上しないような事柄である。その意味で、産経新聞がとっている現在の行動は、まともな日本人からすれば「国賊」以外の何者でもないものだ。
日本にこんな全国紙が存在する限り、日中間の未来は悲観的なものにならざるをえない。我々は「日本人」である以前に、間違った過去の行動を間違ったものとして認められる、「対等の人間」であるべきはずだ。

【産経ニュース】 http://www.sankei.com/premium/news/161106/prm1611060028-n1.html
【日本テレビ】 http://www.ntv.co.jp/document/info/archive/20161016.html

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