公共情報いまむかし

霞ヶ関の東京地裁14階にある記録閲覧室。以前ならそれほど見なかった光景だが最近はいつも人がごった返している。民事訴訟記録の閲覧はひと昔前は一部の記者など調査方法を知る取材者らの調査手段にすぎなかったが、最近は裁判記録閲覧のマニュアル本なども出版されていて利用者層が変化した感がある。そのせいか裁判所の職員も忙しそうに立ち振る舞い、さらに気が立っていることもしばしばだ。ひるがえって、私が政党機関紙にいた30年前、すぐ近くにあった国立国会図書館では国会審議の議事録を「紙」で公開していた。記者として委員会審議で何が話し合われたかを詳細に知るには、現場でその審議を自分の耳で聞くか、あるいは活字化された議事録が印刷されて出てくるのを待つしかなかった。現在は各委員会の審議をリアルタイムのネット中継で見ることができる。時代は変わったとはいえ、まだまだ発展段階だ。裁判所の記録も、訴訟を起こされた裁判所に足を運ばなければ、今も記録を読むことはできない。地方の場合は出張するコストとの兼ね合いが生じるので難しくなる。裁判が集中する東京から遠くに住んでいては、この仕事も成り立たない。自分が小説家なら田舎に引っ込んで仕事をするのも有力な選択肢の一つとなるが、取材を伴う業務ではそうはいかない。東京一極集中が国家的課題となるなか、Uターンしたい気持ちを抱きながらも、できない現状がある。

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