日蓮生誕800周年

さまざまな100周年がとりざたされる本年だが、この800周年はあまり見たことがない。なぜだろう。鎌倉仏教の開祖の一人、日蓮は1222年2月生まれ(旧暦)。現在の暦なら桜が咲くころの季節に出生した。この夏、個人的に鎌倉市を訪れる機会があり、日蓮が鎌倉で布教を始めて住んだとされる草庵跡を再訪した。鎌倉駅から歩いて30分ほどの「名越」というバス停がある付近に日蓮系の寺が3か所ほど固まっており、そのいずれもが「草庵跡」を主張している。その一つ、安国論寺は、日蓮が立正安国論という論文を書いたとされるいわれの寺で、その一角に松葉ヶ谷跡がある。おそらく念仏者らから襲撃されたとされる場所はここなのだろう。そのすぐ近くに妙法寺という寺があり、ここにも松葉ヶ谷草庵跡が残っている。何を言いたいかといえば、現在の政権与党の一角を占める公明党の支持母体である創価学会の宗教は、この日蓮の教えに基づく鎌倉仏教だからだ。鎌倉時代の宗教を信奉する団体がカルトなどと言われるのは当方にはいつも奇妙に感じられる。繰り返しになるが現在、統一教会が社会的問題となっているのは、その「反社会性」にあるのであって、「宗教」という枠組みそのものが問題とされているわけではない。統一教会も創価学会も似たようなものとの陳腐な言説もネットではあふれているが、一般人ならまだしも、取材者である場合は、それでは済まない。少なくとも創価学会の教義を掘り始めれば、日蓮抜きには何も語れない。きちんと教団の背景と歴史を知った上で論評する取材者はむしろまれだ。日本の宗教報道が表面的なのは、おしなべて取材者の認識不足、勉強不足によるところが大きい。

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