日本共産党の歴史修正主義を浮き彫りにする新書

5月25日発行で中公新書から厚めの『日本共産党 「革命」を夢見た100年』という本が出版された。書いたのは学者の中北浩爾氏である。客観的な記述に加え、ときに筆者なりの評価もまじるが、歴史を正当に位置づけようとする姿勢が顕著だ。その結果、日本共産党が過去に党の綱領として実際に存在したものであるにもかかわらず、その後、都合が悪くなって綱領とはみなさなくなった「51年綱領」についても、淡々と正確に記述している。このコラムですでに指摘しているが、日本共産党は自分の党史に関しては完全な歴史修正主義の立場だ。都合の悪い過去の歴史を抹殺し、なかったもののように振る舞い、現状の美化に努める。

本書が同党のそうした誤った姿勢を根本から覆す内容になっていることは皮肉だ。もちろん著者にそうした意図が主なものとしてあったわけではないかもしれないが、結果的にそうなってしまったというのがこの書の大きな意義であると感じる。さっそく6月11日(土)付の毎日新聞で、ある識者が書評で取り上げていた。日本共産党を政権交代における重要なカギとしている点で、その認識にはついていけない。つまり、共産党性善説の立場に近い。翌12日(日)付の産経新聞で佐藤優氏は「共産党を震撼させる一冊」という見出しの1面コラムでこの書について取り上げた。佐藤氏は「中北氏は、日本共産党は平和路線に転換したと考えるが、筆者の認識は異なる」と書いている。私も同党が平和路線に転換したとは考えない。それは見せかけの「仮の姿」(=革命のための方便)にすぎず、同党が内包する本質的な暴力的DNAは何ら変わらないままの状態と考えるからだ。その証明として、過去に「あったこと」を「なかったこと」のように振る舞う手法が典型的だ。

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