「過去への盲目」

ガラパゴスという言葉がある。もともとは絶海の孤島で生物類が独自進化するさまを称して周辺地域と異なる態様に至った状況を説明する際の「形容詞」として使われるようになった。日本にもガラパゴス的な状態があるのは、一つは共産主義勢力に対する国民的姿勢であろう。欧米ではすでに「独裁主義」「独善主義」として共産主義が社会的に排斥されているのに対し、日本では国会議員として少なくない議席をもち、大手を振って歩いている。しかも今回の総選挙では「与党入り」を公言し、権力を動かす一歩手前まで来ている状況だ。世界でこのような国はほかに存在しない。日本社会が共産主義に対し、無防備かつ無認識に至ったのは、同党の宮本顕治が主導する以降の意識的なプロパガンダによる側面が大きい。70年前の10月、一度は国会で議席ゼロに陥ったが、以降、イメージ変化を信条とする戦略を打ち出し、女性を大幅に登用するなど、民主主義をことさらに強調し、それらしく振る舞う行動を続けた結果、いまではこの国の有権者の多くが同党がまるで「平和主義の政党」であり、「清潔な党」であるように『錯覚』するまでになった。だが歴史的に同党を検証すれば、実態は逆であることも珍しくなく、幾多の暴力活動の歴史をもち、陰惨なリンチや一人独裁など、多くの欠陥をもった政党であることは明らかだ。人間の行動と同じく、政党という一つの組織体の評価も、目先の見える範囲のものではなく、「過去の行動」がその基準とならなければならないはずだ。いま野党の中で、同党以外の勢力が共産党を受け入れるのは、こうした「過去への盲目」が背景となっている。反知性主義は何も右側だけでなく、左側にも共通する現象である。

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