次回判決となった元職員3人による蒸し返し裁判

 この夏、初めて中国・南京を訪れた。前々から計画していたもので、南京虐殺が行われた現場を自分の目で直接確認し、土地勘を得るのが主な目的だった。機中で手にしたのは鈴木明著『「南京大虐殺」のまぼろし』(文藝春秋、1973年)。行きと帰りに計2回通読したが、立派なノンフィクション作品と感じた。誤解のないように申し添えるが、この本は南京事件はまぼろしで犠牲者などいなかった、と記述している本ではない。南京で日本軍が虐殺を行った事実はニュートラルな立場から明確に認めている本である。この本がまぼろしと指摘しているのは、百人斬りを行ったという理由で戦犯処刑された2人の日本軍兵士の事件で、本書を読む限り、百人斬りが実態に行われたかどうかは確かに疑わしいとも思えてくる。ただしこの百人斬りは、南京虐殺事件の「枝葉」にすぎず、事件の本質とはほとんど無関係だ。
 夏の南京はとにかく暑かった。久方ぶりの中国大陸だったが、交通法規のいい加減さには改めて驚いた。特にバイクが歩行者用の道路に侵入するので、歩くのにも四方八方に細心の注意を払わなければならない。交通事故に遭わずに帰国できてほっとしたくらいだ。
 さて本題は、最近出版された清水潔著『「南京事件」を調査せよ』(文藝春秋)である。冒頭の書籍と同じ出版社から出されたものだが、近年の「なかった説」の感情的な大合唱に抗するかのように、事実を事実として伝えることを試みる、非常に公益性の高い仕事である。しかも約80年前の事件を現在の日本と関連づけながら、いつか来た道に戻る危険性へ警鐘を鳴らす。当時も「邦人保護」を名目に、南京攻略につながったとする。南京虐殺事件の真相を再発掘した労作に、小生も頑張らねばと著者に感謝したい気持ちになった。
<><><><><>南京事件考
20160827<> 創価学会の元本部職員で、分派活動が遠因となり解雇・除名となっていた3人が新たに起こしていた裁判で8月9日、第3回口頭弁論で結審し、次回に判決言い渡しとなっていたことが明らかになった。判決は10月11日、東京地裁で言い渡される。
 3人は川崎学生部の出身で、2003年ごろに結成された任意グループ「足軽会」に所属。組織内組織を構築し、「対話」という名目の威圧的言動などが問題となり、職員を解雇されていた。そのため2012年12月に解雇無効を求める裁判を提起したものの、東京地裁、東京高裁ともに請求を棄却し、昨年10月に最高裁で確定した。にもかかわらず、こんどは職場で不当な配転をされたので各自に100万円の慰謝料を支払えという新たな内容の訴訟を今年3月、創価学会に対して起こしていた。これに対し教団側は、解雇無効を求める裁判ですでに同じことが争われている決着済みの問題であり、蒸し返しの裁判にすぎないと、早期終結を求めていた。

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