実質廃案となった検事の特例定年延長問題

検察幹部の特例定年延長を盛り込んだ検察庁法改正案について昨日、安倍首相は今国会では成立を見送る考えを表明した。本日付でそう書いた新聞は見当たらないが、事実上の廃案に近いと思う。いちおう継続審議で秋の臨時国会につなげると政府は説明するが、秋に先延ばししたところで問題の本質は何も変わらない。むしろ年末年始に解散総選挙を打つ可能性が少しでも残っているとするならば、与党にとってはマイナスにしかならないだろう。1999年以降の自公連立政権の歴史の中で、この種の対決法案で与党側が譲歩したのは、私の記憶にある限り、今回が初めてである。状況として新しい要素として挙げるならば、コロナ禍の渦中で行われた強硬策であったという事実だ。安倍政権のコロナ対策は評価より批判の声のほうが圧倒的に多く、それは生活に根差すものであるため不満が鬱積している状況にある。ましてテレワークなどが増え、外出する機会も減り、ネットを見る時間も増えているだろう。そうした環境下で今回の騒動が起きたため、著名な芸能人などが続々とツイッター上で参入することになった。決定打は検察OB、しかもかなりの大物クラスが声をあげたことだろう。当初は歴代検事総長らだったが、昨日はさらに特捜検事OBなど、複数のグループで検察OBが声をあげた。これにより、芸能人などの訳の分かっていない者たちが騙されて動かされているといった非難も正当性を失うことになった。検察官は確かに身分は行政官であっても、容疑者を起訴する権利をもち、司法権に直接かかわる。行政と司法にまたがるもう一つの重要な権力というべきもので、そこに行政側が素手で介入しようとしたことにより、今回の事態が生まれている。私見だが、検察権力を敵に回して無傷でいられる政治家・政党はむしろ少ないのではないか。だからこそ、その力は、公正に行使されなければならない。今後どのような事態が展開されるのか、検察を敵に回した政治家にとっては、自業自得の展開となるのかもしれない。

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