選挙目当ての入管法改正問題

本日付の朝刊はどの新聞も、入管法改正案の閣議決定および衆院提出の件を1面トップ級で大きく扱っている。見出しでは、産経の「単純労働 外国人受け入れ」「政策転換」が端的に内容を示している。菅官房長官が10月25日付毎日新聞のインタビューで、「安倍政権は方向性を出したら早い。私たちが取り組んでいる課題は今まで先送りされてきたものが多い」と語っているが、実際はその通りなのだろう。だがホンネは、来年夏の参院選挙を見込んで、人手不足に悲鳴をあげる各種業界団体への配慮があることも明らかだろう。国の命運を左右するような重大問題を、わずか1回の臨時国会で仕上げようという性急さには、大きな禍根を残しかねないとの声が消えない。

一つは制度設計の問題だ。政府は現状でもかなり問題を指摘されている技能実習制度の上に、制度を構築している。さらに管理・治安当局である法務省に、すべての外国人政策を統合させている。これで労働者や生活者の視点にたった施策が打てるかといえば、そもそも論からして疑問だ。

90年代初頭、バブル時代の人手不足解消のために、当時の自民党政府は3世までの「日系人」に単純労働の道を解禁し、その結果、日系ブラジル人を中心に多くの外国人が日本に集住するようになった。だが日本語政策など肝心の課題に国は正面から取り組まず、必然的に、その対応は、地方自治体任せとなった。いま群馬県の大泉市や静岡県の浜松市などが集住地帯として取り上げられるが、今回の政策転換の規模および見込まれる影響は、「日系人解禁」のそれをはるかに超えるものだ。

すでに隣の韓国では、外国人労働者の導入に先んじてカジを切っており、その意味では、この問題では日本よりずっと進んだ「先輩」に当たる。日本は韓国の後塵を拝しているわけだが、日本の場合、政策の進め方は拙速以外の何物でもない。内容が事実上の移民政策と呼ばれるのは実態に即してそう評されているのであり、韓国では不法滞在者の急増も問題になっている。

日本では外国人労働者を雇用の「調整弁」としか捉えていない内容であり、等しい生活者として扱わない以上、こんご多くの社会問題が蓄積され、爆発する事態も想定される。

ましてや近年の日本では、「反中嫌韓」など排外主義ナショナリズムが席巻し、これらの土壌のもとに異邦人の流入を解禁してどういう結果を招くかは、ブレーキとアクセルを同時に踏むような危うさがある。

いずれにせよこの問題は、自民党と公明党の「責任」問題につながる。政権与党の責任はどこまでも重い。

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