ウクライナの北朝鮮兵

北朝鮮がウクライナ戦争に派遣した兵士の実態が時折報道される。本日付紙面では偶然ながら、日経と産経が似たようなコラムを掲載した。産経の阿比留瑠比記者は朝鮮半島問題の専門家である西岡力氏の情報に全面依拠する形で、北朝鮮兵士に支払われるべき月給や死亡補償金が兵士や家族には「一切支払われていない」と指摘し、金正恩総書記の統治資金になっていると結論する。金額にして「430億円近い金銭」といい、「まさにぬれ手であわ」と論評する。極めつけは負傷した兵士で北朝鮮に戻しても身体障害者になると判断された者については「現地で薬物注射をして殺している」との記述だ。この記事内容の情報源となった西岡氏のニュースソースは「韓国で、北朝鮮とつながる人物に取材して得た情報」となっており、単純に考えると「伝聞の伝聞のそのまた伝聞」といったレベルの情報のようだ。その証明ともいえるのか、本日付日経に掲載された「Deep Insight」の記事「米朝首脳が再び握手する日」とは派遣人数や負傷者の人数、追加派遣の人数など、基本的な情報がことごとく異なる。当然ながら、どちらが正しい情報なのか、信憑性の高い情報なのかということになるだろう。一読して分析的で参考になるのは、日経記事のほうである。日経記事では「参戦は北朝鮮側から申し出たとの説が有力だ」と書かれ、さらに「ウクライナ停戦交渉が進展した後に米朝交渉が動き出すシナリオが急浮上」など、今後の予測につながるような書き方になっている。産経コラムは共産主義国の悲惨さを強調したいがため、バイアスが加速している可能性がある。

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