奥付ベースで昨年『実録・白鳥事件』を発刊してちょうど1年となる。白鳥警部射殺事件の犯人と被害者を中心に描いたノンフィクションだが、私としては被害者である白鳥一雄警部と主謀者である村上国治の評伝を併せて書いたような面が強かった。ふたりは1915年、23年生まれのいわゆる「大正世代」で当然ながら時代の波を色濃く受けて人生を送る。私が初めて評伝を書いた人物は1907年生まれの沖縄の空手家だが、この人物は「明治世代」。評伝は一人の人物の生きた軌跡を探し、線にする。だが時間の経過とともにわからないところも出てくる。ノンフィクションで描くには時間的な制約が生じることが多々あるからだ。そこでわからないところは、わかるところつまり点と点を結びつけ、「三角測量」するということをルポライターの竹中労が語っていたことがある。いずれ私の仕事も「昭和世代」に移る。