フリーライターという非正規労働

30年以上前、世の中がバブル経済に浮かれていた頃は堅実的な生き方は少数の若者にしか好まれず、私も役所や大企業に就職するという考えをほとんど持たない口だった。バブルがはじけて以降の日本社会は閉塞状態が続き、安定よりも自由を選択した生き方には厳しい時代となった。フリーライターは聞こえはいいものの、非正規労働の最たる職種の一つであることに変わりはない。30年前には普通に周囲にも多くいた気がするが、現在では「絶滅危惧種」に近くなりつつある。一つは生活の安定が望めないことだ。感覚的にいっても、主たる収入源である原稿料は30年前と比べてまったく上がっていない。むしろ私の肌感覚では下がっているとも思う。それでいて最近はインボイス制度が始まったおかげで一律10%の増税がのしかかる。それで生きていけというのはむしろ無理な話だ。現在、大手企業などの賃上げのニュースが繰り返されているが、それは大手企業や中小企業でも「社員」の話であって、非正規労働者の話ではない。要するにしわ寄せを被っているのは非社員なのだ。非社員には、職種だけでなく、女性も多く含まれる。世の中がどのような仕組みになっていて、どういう職種にしわ寄せが生じているかは政治家にとっては重要な話だ。政府が訪問介護報酬を切り下げたことが問題になっていたが、第2次安倍政権当初の生活保護費の切り下げなどの措置と同様、弱者に寄り添わない政治が随所に見え隠れする。これらはいわば炭鉱のカナリアのようなものだが、安定した立場からはこのような状況は見えにくく、肌感覚でも理解しずらいものがある。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。